ヤバい経営学





経営とは何か

全くの苦手分野などと言ってる場合ではないので勉強しています。

[-] 1. 失敗とリスクヘッジ

[-] 1.1. 失敗プロジェクトにも意味がある

ビジネス本は成功事例で溢れています。

でも、その裏に数千の失敗事例が埋もれています。

元GEのジャック・ウェルチのような…経営者を、私たちはもてはやしている。…私たち
は、失敗した経営者のことを思い出しも(しない)。…しかし、もし私たちが経営者や
プロジェクトチーム、戦闘機の全貌を見ることができたら、全く違った結論にたどり
着くことになるだろう。
p.22

数千とある会社の中の1つの成功例は本当に参考になるのか、という問いかけ。 凡人がスーパーマンと同じことをやってスーパーマンになれるか? と言う極論だけではありません。

「戦闘機の全貌」とは、前ページで触れられているように、 被弾した戦闘機だけから飛行機の耐久の試験をしてはならない、ということです (帰還できず戦場で散っていった何倍もの数の機体は検証されていないのだから)。

また、もっと統計学的な指摘がされています:

最も投資成績のいいファンドは、必ずしも一番能力が高いファンドではない。…能力
があって注意深い投資家は、資金を失わないし、十分なリターンを得ることができる
だろう。しかし、それでは一番高い成績を得ることはできないのだ。
p.112

会社経営と投資家では話が飛躍してるでしょうか? いや、リスクとリターン(利益)と言う点で共通しています。 そして、リスクヘッジは投資家に当然の資質であることを考えると、 同じことが会社経営にも言えないでしょうか。

であれば、超ハイリスク・ハイリターンを求めるのではなく、ある程度の リスクヘッジが経営にも求められる、と理解しました。

[-] 2. 因果関係の倒錯

規模を大きくするという戦略に熱を上げている経営者は、因果関係を逆さまにしている…。
成功は会社を大きくするかもしれないが、規模を求めることが成功に結びつくわけではない
p.74

合併によって資本効率を上げる、ということは今の日本でも日常のように行われています。

例えば、トヨタとスズキの提携。バブル崩壊後の大銀行の合併は記憶に新しい。

しかし、万能薬ではないだけでなく、失敗する率のほうが高い、と著者は警告します。

3章には、合併の失敗例が嫌というほど載っています。

[-] 2.1. 余談

僕自身、以前にいた会社の組織の末端にて「Mega Merger」 を目の当たりにしてきました。

その後15年ほど経ってますが、何か素晴らしい製品は生み出されたでしょうか。

その後、その会社は、今度は分割されました。

著者が後の章で述べているような組織のシャッフルなら意味はあるでしょうが、 この分割にどういった意味があるのか、既に外野の僕には語る資格はありません。

しかし、合併・分割にかかった膨大なコストと、 何も生み出さないまま合併報酬を手にして去った「時の CEO」それ自身が、 これまでの経緯の結果を表している、と僕は考えます。

余談でした。

[-] 3. アナリスト・コンサルタント・社外取締役・ストックオプション

出所怪しい概念が出ては消えていくこの世界。

統計学的なデータで、これらの無意味さを伝えてくれるこの本は一読の価値が あります。

[-] 4. 経営者の報酬を正当化出来るか?

p.163 の著者からの問いかけ。

良い結果を出した時にだけ報酬を与えよう。(p.169)

これが著者の回答。僕も同感です。

[-] 5. 単純過ぎる「エクセレント・カンパニー」

一つの事業への集中は成功の原因ではなくて、結果なのだ。
…
「強い企業文化を育もう」という話し…も正しい議論ではない。…まとまりのある
企業文化は、企業の成功の原因ではなく、結果なのだ。
p.181〜

「コアコンピタンスへの集中」とはよく言われてきた標語だった。 一見正しいようだけど、これは企業がうまく行った結果なのだ、と著者は指摘します。

もちろん、レベルの低い浮気症がうまく行くとも僕には思えませんが、 しかし、色々試して駄目なら、他の案を実験する、と言うのも十分合理的です。

[-] 6. リストラの効果

社員数を減らす…施策の短期的なメリットは明らかだ。…その反面、
長期的に大きなマイナスがあることも証明されている。
…残念ながら、そういう結末は、時間が経って初めて明らかになる。
p.184〜

そう。証明されているのです。増田悦佐氏が既に指摘していたことなのですが、 データがどこにあったかは分かりませんでした。 しかし、この著者もデータで警告しているので、私も確信を持つことができています(^^)。

他方、(人員削減ではなく)組織再編を、著者は強く勧めています:

やっかいな組織再編を通じて、内部の人をあちこちに配置し直すということは、
…「やるべきこと」だ、と私は強く思っている。p.253

(日本語の)「リストラ」はもっぱら人員削減の意味で使われていますが、 組織再編も英語だと re-structuring なので、ここは明確に区別しておく必要が あるでしょう。

用語の整理はさておき、組織再編のメリットは7章に詳しく書かれています。

末端エンジニアに過ぎない僕には無縁の世界でしたが、wellstech では そんなことは言っていられません。自己組織再編をやり、成功の罠を避け、 進歩しなければそれは停滞であり死なのですから。






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